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地球サイズ仮想望遠鏡

 

100年以上前に存在が予言されながら、人類が目に出来なかった謎の天体ブラックホールの撮影に、日米欧などの国際チームがついに成功した。

世界の天文台が結んだ「地球サイズの巨大望遠鏡」で観測する壮大な作戦が初の快挙をもたらした。

ブラックホールの存在を裏付ける最後の1ピース」

チームのメンバーで、日本代表を務める本間希機(まれき)・国立天文台教授は強調する。

極めて強い重力を持つブラックホールは、この世で最も速い光すら脱出できないため、望遠鏡を向けても捉えられない。

一方、その周囲では重力で引き付けられたガスなどが円盤状になり、様々な電磁波(光の仲間)を放っている。

天文学者は電磁波を観測してその存在に迫ってきたが、天体そのものの姿に肉薄できなかった。

最も近い銀河系中心の巨大ブラックホールでも地球から約2万6000光年離れ、地球から見ると針で刺した穴のように小さく、周りの光に埋もれて見えないからだ。

撮影に成功したМ87はさらに遠い約5500万光年先にある。

飛び切り高い視力を持った望遠鏡で周辺の光を観測すれば、ブラックホールが影絵のように「黒い穴」として浮かび上がるはず。

日本の国立天文台を含む約80研究機関の200人を超すチームが結成され観測を目指すことになった。

望遠鏡の視力を上げるには、口径を大きくする必要がある。

チームは、最大で約1万キロメートル以上離れたチリ、米ハワイ、南極など世界8か所の電波望遠鏡を一斉に巨大ブラックホールに向けて、地球サイズの口径の望遠鏡を仮想的に作り上げることに成功した。

約38万キロメートル離れた月の表面にあるゴルフボールを見分けることが出来るという。

膨大なデータが詰まった8か所のハードディスクは、空輸などで1か所に集められて分析が重ねられた。

2017年4月の一斉観測から2年を経て、ようやく1枚の画像にまとめられた。

ブラックホールは成り立ち~成長まで、仕組みのほとんどが謎に包まれてきた。

今回を成果をもとに、様々な巨大ブラックホールで質量(重さ)や回転の速度などが従来に比べて高精度に推測できる可能性があるという。